むし歯予防の最新情報 Q&A
2022.05.04
Q1 ブラッシングは食後30分にするのが正しい?
A1 × ブラッシングは食後すぐがいい!
平成の中頃、「食後すぐに歯を磨くと酸により溶かされたエナメル質を傷つけるので、唾液による再石灰化で歯の表層が修復される時間を待ったほうがいい」という情報がマスコミを通じて報道されました。しかし、これは酸性の飲食物を口にした場合は正しいのですが、通常の食事の場合は正しくありません。そもそも虫歯予防のブラッシングの目的は、酸を産生する細菌のエサとなる発酵性糖質を取り除いて、酸を出させないようにすることです。「食後すぐに磨く」が正しいのです。
Q2 ブラッシング後に口はすすがない?
A2 ○ フッ素入りの歯磨き剤を使った後はすすがない!
昭和時代では、ブラッシング後はよくうがいをして歯磨き剤は口腔内に残さないのが常識でした。しかし、最近になり歯磨き剤に含まれたフッ素の効果を最大限に発揮させるため、歯面のフッ素が流れ落ちないように、スウェーデンのイエテボリ大学ではブラッシング後のすすぎは行わないことを推奨しています。 ブラッシング後は泡を吐き出すだけで水でのすすぎはしない。すすがないと気持ち悪いという人は、少量の水で1回だけのすすぎを日本歯科医師会は勧めています。
Q3 キシリトールは虫歯予防にとても効果がある?
A3 × 虫歯の原因にはならないが、う蝕予防効果は十分に証明されてない。
キシリトールは、唾液分泌促進、再石灰化促進、プラーク中の酸の中和促進、ミュータンス菌の代謝の阻害などの作用があり、虫歯予防の効果があるとされていました。しかし、2015年に、医療研究のエビデンスを評価するコクランがキシリトールの虫歯予防、修復効果について検証した結果、「虫歯予防に効果があるとするエビデンスは十分とは言えない」と判定しました。さらに、「キシリトール入り食品は虫歯予防を目的として広く利用されているが、その効果については他の糖アルコールと同様に『う蝕の原因にならない甘味料』であり、現在では、それ以上の予防効果は不明である。」とされています。
Q4 虫歯菌の母子伝播は絶対に避けるべき?
A4 × それほど神経質にならなくてよい。
むし歯菌は「感染の窓」といわれる生後19ヶ月~31ヶ月の期間に母親などから伝播すると言われており、むし歯予防には、まず母子伝播を避けることが重要とされていました。そのため、大人の唾液が幼児の口腔に入らないよう母子が食器を共有しないなどが言われていました。しかし、近年むし歯菌の伝播は母親からが最も多いものの、父親、祖父母、兄弟、友人からの伝播もあることがわかり、むし歯菌の伝播はないほうがよいけれど、むし歯の原因菌の伝播を100%防ぐことは難しい上、たとえ伝播したとしても、食事指導、フッ素の使用、適切なブラッシングで発症が予防できるため、それほど神経質にならなくてよいという考え方が広がっています。また、過度なむし歯菌の伝播予防は親子関係を損なう可能性があることも理由の一つです。
参考文献 歯科衛生士 January 2022 vol .46