歯周病が肥満を引き起こす?!
2019.07.23
歯周病とは歯肉炎や歯周炎などの歯ぐきの病気の総称でおもに細菌感染によって引き起こされます。症状は、歯肉からの出血や歯茎の腫れ、痛み、歯の動揺などがあります。また、肥満はわが国ではBMI(体重÷身長2)25が基準とされ、ちなみに国民健康・栄養調査によると、1980年から2010年の30年の間に男性ではすべての年齢層でBMIが25を超える肥満者が増加しています。他方女性では60歳代までほぼ減少傾向にあって、逆にBMI18.5未満の痩せが増加しており、閉経後の骨粗しょう症の増加が懸念されています。また、5年ごとに同時に実施されている糖尿病実態調査では糖尿病が急増しており、特に男性の肥満が重要な問題となりつつあります。(肥満と糖尿病には因果関係が明らかにされています。)
さて、この歯周病と肥満、最近特に歯周病から肥満を引き起こすことが明らかになってきました。歯周病は細菌感染が主な原因ですが、その細菌が出す毒素(LPS)や炎症により出る化学物質が全身の脂質代謝に影響を及ぼしています。マウスの実験では、LPSを皮下に埋め込むと、肝臓や脂肪組織に脂肪の沈着が起き、体重も増加したとの結果が出ています。このことから歯周病における細菌感染が、血中のLPS濃度を上昇させ、これが肝臓や脂肪細胞に作用して肥満を誘発する可能性が示唆されています。
また、2010年には、4mm以上の歯周ポケット(歯と歯茎の境目の病的な溝)を有する患者では肥満になりやすいことが報告され、さらに、歯周病の治療を行うことで、血中のLDLコレステロール値、総コレステロール値が減少したという研究もあります。これらの研究結果からも歯周炎といった局所の炎症がLPSや科学物質を介して肝臓や脂肪細胞に働き肥満を誘発している可能性が考えられるようになってきました。
このように、歯周病は歯茎にとどまる病気ではもはやなく、肥満など全身に影響を及ぼしてしまう疾患と言えるでしょう。(ちなみに歯周病は糖尿病や動脈硬化、骨粗鬆症、早産、低体重児出産、関節リュウマチ、誤嚥性肺炎などとの関連もあります。)また歯周病は自覚症状に乏しく静かに進行してしまいます。歯科医院での定期的なメンテナンスや健診を受けることでむし歯や歯周病といった局所的な予防のみならず全身疾患の予防にもつながりますのでぜひ歯科の受診をされてはいかがでしょうか。当院では、定期的なメンテナンスをお勧めしております。