歯周病と骨粗鬆症の関係
2019.09.11
1,骨粗鬆症とは?
骨粗鬆症とは、骨密度の減少を特徴とする全身疾患で、いったん成熟した骨の骨密度が減って、骨格が脆くなるために骨折が生じやすくなる疾患として知られています。また、男女比は1:3で女性に多いと言われています。その理由としては最大骨密度が女性の方が低いこと、閉経後に急速な骨密度の低下が起こること、女性の方が長寿であることが挙げられます。
骨粗鬆症の原因としては、栄養不良、年齢、運動不足、閉経によるエストロゲンの減少、長期にわたるステロイドホルモンの影響、他の全身疾患の影響などがあります。
2,歯周病と骨粗鬆症の相互関係
歯周病と骨粗鬆症は、ともに骨に変化が現れる疾患として相互関係が示唆されており多くの研究がなされています。2つの疾患を結びつけるメカニズムとしては、骨粗鬆症によって全身の骨密度が低下し、顎骨においても骨密度、骨
質の低下が起こる。そこへ細菌感染を引き金とする歯周病による歯槽骨の吸収が起こると、骨粗鬆症でない歯周病患者と比較して、骨粗鬆症に罹患した歯周病患者ではより悪化していきます。また、閉経後骨粗鬆症ではエストロゲンの低下により、抑制されていた骨吸収性サイトカインIL-1,IL-6,TNF-αなどが増加することによって、エストロゲン量が正常である歯周病患者と比較して、歯槽骨吸収が増加するというものがあります。
3,骨粗鬆症治療薬と歯周病
骨粗鬆症治療薬の服用が歯周病の進行を抑制する報告もあり、特にエストロゲンとビスフォスフォネートは歯の喪失と無歯顎化、下顎骨骨量低下、歯槽骨吸収、クリニカルアタッチメントレベルの喪失について抑制的に作用することが報告されています。一方関連性を否定している報告もあり研究報告が待たれる所ではあります。
骨粗鬆症の治療薬ビスフォスフォネートを服用している場合、注意が必要なのは抜歯などの外科処置です。ビスフォスフォネートを服用している時に抜歯などの外科処置を受けた場合、骨の露出、疼痛、しびれ、歯肉腫脹、排膿、歯の動揺などの症状(ビスフォスフォネート関連顎骨壊死BRONJ:bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaws)を引き起こす可能性があります。特に3年以上服用している場合は、2~3ヶ月休薬した後に外科治療や抜歯を行わなくてはなりません。
骨粗鬆症の薬を投与中の患者さまは必ずお申し出ください。
参考文献 ザ・ペリオドントロジー